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さいとうロマンティック
第14話 「部活、校舎周り、意地の張り合い」

 「ファイトー!ラスト1週!」ミカさんたち三人が僕ら野球部一年に向かって叫ぶ。
 校舎周り。いたってシンプルな持久力をつける手段であるがゆえ、後半になると基礎体力の差が顕著に出始め、それがそのまま距離の差となって表れる。野球部に入った頃から、お互い負けたくないと思っていた僕達は意地を張り合い、気が付くといつも三人揃って校舎周りの先頭集団になっていた。そして今日も僕たち三人がいつも通りの独走態勢に入っている。
 「そうっ・・・いやっ・・・さっ・・・」コウスケが切れ切れの息の中で言った。
 「・・・」マコトは押し黙って何も喋らない。もう疲れているのだろうか、ひ弱なやつめ。
 「・・・何んっ・・・だよっ・・・」彼が喋らない以上僕が返事をするしかない。僕も決して話す余裕があるわけじゃないが、こいつらに弱みは見せれない。
 「さっきのっ・・・話・・・昼っ・・・休みにっ・・・話してた・・・アレ・・・何っ・・・だったっ・・・んだろ」
 「知るかよっ・・・何で・・・そんなの気にっ・・・してんの?」
 「いやさっ・・・別にっ・・・気にっ・・・なった・・・だけっ」コウスケが苦しそうに言う。
 「ふっ・・・ん、別のっ・・・意味でっ・・・気にっ・・・なってん・・・じゃないの?」僕はコウスケを挑発する。
 「はっ・・・マジ意味わかっ・・・んねーんっ・・・だけどっ!」見事に挑発に乗るコウスケ、ふふふ、ここで疲れさせて一位は僕が頂いてやる。
 「ふっ・・・ひっ・・・ひひひっ・・・ひっ!」笑う僕、これでトドメだ。
 「マジっ・・・ウゼーっ・・・おまっ・・・えっ・・・、ぜってーっ・・・勝ぁっ・・・つ・・・」作戦成功だ。よーし。
 最終コーナー手前、予想通りコウスケが一人抜け出した、しかし甘い。人間と言えど、それなりの速度でコーナーに突っ込むと歩道からはみ出てしまう。そうならない様にコーナーで速度を落とした時、それがお前の最後だコウスケ。そこで一気に僕が並び、スパートをかけてやる。僕が横に並んだとき、スパートのタイミングを誤ったお前に再び加速する体力はない。僕は顔に笑みを湛え、コーナーへと向かった。
 まずコウスケが左に体をひねり、コーナーに入った。チャンスだ、歩幅が狭くなると同時に速度が落ちた、ここで並んで・・・、よしっ!抜き去る!一気にコウスケに追いついた僕は、最後の直線で一気にスパートをかけ、引き離しにかかった。
 「はっ・・・、ひっ・・・ひひひっ・・・!はぁああっ・・・ひゃっ・・・はぁっはー!」最早声にならないような奇声、もとい笑い声を上げながらコウスケとの距離をつける僕。勝った!堅い!鉄板だ!ゴールまで後30メートルを切った!

 その時だった。

 アウトコースから「三人」の内のもう「一人」、マコトが僕を一気に捲くった。

 一瞬顔をこちらに向け、ニヤリと笑うマコト。しまった、そうだったのか。
 あいつが話に参加しなかったのを、てっきり僕は息が切れて喋れないものと思っていた。しかし違ったのだ。マコトは・・・、体力を回復させるためにっ・・・!

 「ひっ・・・きっ・・・くそっ・・・はっ・・・」既に悔しさを声に表す事も出来ない僕の数メートル前で、マコトがゴールである校門へと突っ込んだ。
 そのまま僕も崩れる様ににゴールに入り、まもなくコウスケもゴールした。

 「ふっ・・・はっはっ・・・はっ・・・お前らっ・・・自爆しあっ・・・てっ・・・ふっひっ・・・はっ・・・ひっひっ」地面に座り込んだマコトが呼吸困難になりながら笑う。
 「ちょっ・・・クソっ・・・ユウ・・・てめっ・・・」地面にへばりながら、敵意を含んだ視線を投げかけてくるコウスケ。
 「んっ・・・作戦っ・・・ミスったっ・・・ちくっ・・・しょっ!」同じようにへばりながら僕は言った。

 この後、体力が回復したコウスケに笑いながら関節技をかけられたのは言うまでもない。


 続く。

 バックナンバー
 第00話 「序章、登場、おやすみなさい」
 第01話 「おはよう、思い出、前半戦」
 第02話 「思い出、後半戦、行ってきます」
 第03話 「教室、友達、昼休み」
 第04話 「部活、ジャーマネ、地獄耳」
 第05話 「帰り道、文化祭、一日の終わり」
 第06話 「おはよう、思い出、いちばんめ」
 第07話 「思い出、にばんめ、自分のこころ」
 第08話 「思い出、さんばんめ、先手必勝!」
 第09話 「思い出、よんばんめ、自己紹介」
 第10話 「思い出、ごばんめ、潜入だ!」
 第11話 「思い出、ろくばんめ、ジャンプ!」
 第12話 「思い出、ななばんめ、理想と現実?」
 第13話 「教室、友達、昼休み」
by emporfahren | 2006-02-14 23:24
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