人気ブログランキング | 話題のタグを見る
さいとうロマンティック
第05話 「帰り道、文化祭、一日の終わり」

 部活も終わり、帰り道を歩く私とアオイ。ナツミは私たちとは別の友達と遊びに行ってしまった、薄情なヤツめ。
「あぁぁー、つーかーれーたーよーぉー」
 私は言った。
「んぐっ・・・、んねー、んっ・・・、ふぅー、今日も一日しんどかったねー」
 アオイがミネラルウォーターを飲みながら続けて言う。
「そういや、さっきの話だけど、二軍は文化祭何やるのかなー」
「うーん何だろうねぇ、ミカは何やりたい?」
「えー、うーん、何だろう、でもどうせ二軍は売店でしょ、選択肢ねーよなぁ」
「やっぱりステージ系はだめなのかなぁ」
 アオイが言った。
「そりゃー、ステージものも面白そうだけど・・・」
 私は続けた。
「あんま目立つような事やれる人いないじゃん、私たちも」
「それもそうだねー」
「まぁとにかく、私たちは十中八九売り子だし」
「そうだねぇ・・・」
 私たちはため息をついた。

「そういえば・・・」
 今度はアオイが切り出した。
「ん?」
「昨日のこと、本当にごめんね・・・」
「んーもー良いって!無事だったし」
「でもさぁ、大丈夫だったの?」
「平気だよー、ぴんぴんしてるじゃん!」
「でも家までの記憶ないんでしょ?」
「いやーまぁ・・・」
「その助けてくれた人が送ってくれたの?」
「さぁどうなんだろう・・・、でも」
「でも?」
「わざわざ助けてくれたしさ、そうそう変な事はしないでしょ」
「うん・・・」
「それにさー、何か・・・、何かだけどその人知ってる気がするんだよね」
「え?」
「いや朦朧としてたから解らないけど、なんか・・・」
「なんか?」
「聞き覚えのある声って言うか・・・、いやーまぁ多分気のせいだけど」
「じゃあさ!じゃあさ!ひょっとして知り合いが正体を隠すためにそんな名前言ったんじゃないの!?」
 アオイが急に興奮しだした。少し引く私。
「ちょ・・・、なんでそんな楽しそうなのよ・・・、ナツミじゃ有るまいし・・・」
「だって何か凄いよ!ヒーローが知り合いで、その上正体を隠してるなんて!」
「だからさー、知り合いなら隠す理由がないじゃんよ」
 目を輝かせながらアオイが語る。
「きっと、アレだよ!正体がばれるとマズいんだよ!」
「正体って・・・」
 アオイの尋常じゃないファンタジー好きを忘れていた、今彼女の頭の中では謎のヒーローが夜の街を颯爽と飛んでいるのだろう。
 何かまた面倒な流れになってきてるな・・・。
 そう思った私はこれ以上アオイの妄想が膨らむ前にこの話を終わらせる事にした。
「もうこの話はお終い、疲れたし、何もなかったしもう良いじゃん?」
「でも・・・」
「もういいから」
「ヒーローが・・・」 
「しゅーりょー!」
「・・・はーい」
 そうして私たちは家路につき、面倒な一日がやっと終わりを告げた。 


 続く。
 次は水曜日午後十時投稿予定。

 バックナンバー
 第00話 「序章、登場、おやすみなさい」
 第01話 「おはよう、思い出、前半戦」
 第02話 「思い出、後半戦、行ってきます」
 第03話 「教室、友達、昼休み」
 第04話 「部活、ジャーマネ、地獄耳」
by emporfahren | 2005-12-19 09:41
<< 色々 ぎゃっ >>